トーチソング

方向音痴 車に轢かれ

12月18日(日) マイ・フェイバリット・エロ同人

 ゼミ論文とかサークルのブログとか、他に書くべきものがあるけど、書く気も書ける気もしないので、気晴らしに好きなエロ同人の話をします。

 僕の好きな漫画。それは『いちご100%
 僕の好きなヒロイン。それは西野つかさ

 じゃあ、西野つかさ俺の嫁~、みたいな考えかというと、まったく違う。西野つかさは、僕にとって明らかに手に届かない存在だ。そもそも『いちご100%』本編においても、西野は当初、真中にとって手の届かない存在として描かれる。一度は成り行きで付き合ってみたけれど、精神の成熟度がまるで段違い。不釣り合いな関係が気まずくなり、次第に距離が離れ、破局する。西野に振られた真中は、同じ方向の夢を持つ東城とキャッキャウフフの日々を送る。当初はそのまま東城とゴールインするはずだった。ところがどっこい、人気が出てしまって、なかなか連載が終えられない。単行本にして全19巻という、ラブコメでは異例の長期連載。その結果、真中は圧倒的成長を遂げる。まるで僕らの平均値のような、冴えないスケベ少年は、甘酸っぱさとほろ苦さが混じり合う、色彩豊かな青春を経て、精悍な好青年へと進化したのだ。そしてやっと、真中と西野は同等の立場として再び結ばれる。

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象徴的な懸垂告白のシーン。第1話(左)では、冴えない少年が、学園のマドンナとの格差を力づくで埋めるように、懸垂をしながら告白する。懸垂は背伸びの暗喩と言える。第142話(右)では、少女がそれに応えるように、真逆の構図で告白する。ここでようやく二人は恋人同士になれたのだ。このシーンを見た僕は目に涙を浮かべながら絶頂した。

 僕は、こんな青年にはなれない。というか、なれなかった。具体的な夢も持たず、中高一貫の男子校で灰色の青春を送ったキモオタは、逆立ちしたって西野と釣り合う男にはなれない。あえて言うなら、僕はいちごパンツに出会わなかった真中淳平なのだ。東城と夢を語らず、西野と愛を交わさず、ただ自室でビデオカメラを弄る冴えない少年。その延長が今の僕だ。西野には一生手が届かず、いや、手を伸ばすことも出来ず、遠くから憧れを抱くまま死んでゆく。次元の壁以上の断絶が、僕と西野の間にはあるのだ。

 ここでやっとエロ同人の話になる。上の断絶から、僕は西野とのセックスなんてまるで想像できない。ゆえに、真中が西野といちゃいちゃセックスする同人誌を見てもシコれない。モブに自己投影して、彼女をレイプすることも僕には出来ない。手を出すどころか、ただ手を伸ばすことすら僕には叶わないのだ。そんな繊細な僕のちんこに、見事に刺さったのがこの作品。

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 天野雨乃『いちごMAX%』

 いい加減なタイトルとは裏腹に、素晴らしい内容のエロ同人である。画風の再現度は勿論、話の展開が群を抜いている。
 ネタバレしながらレビューしていこう。

 まず、主人公・真中のもとに一通のビデオテープが届く。中身を確認してみると、両手を縛られた3人の少女が画面に映る。少女らは睡眠薬か何かで眠らされているらしいが、目隠しとギャグボールのせいで顔は良く見えない。そこに男たちがわらわらと現れ、彼女たちの体を弄び始める。しばらく乳首や陰部を愛撫した後、男たちは少女らを俯せに寝かせる。挿入。破瓜の痛みで少女たちは目を覚ます。ボールギャグの穴から呻き声を上げ、体をよじるが、男たちは構わずピストン運動を続ける。射精。そして少女たちの目隠しが外される。その一人の顔が画面に映され、真中は愕然とする。自分が今まで夢中でズリネタにしていた少女の正体は、東城綾だったのだ。
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 これが第1章。見知らぬ少女をおかずにオナニーしていたら、実は東城綾だった。この流れは、謎のいちごパンツの少女に初恋をしたら、その正体は東城綾だった、という原作序盤の展開を踏襲している。また、原作では真中とヒロインたちを結ぶビデオによって、両者の隔絶を描いているのも味わい深い。

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 東城綾西野つかさ北大路さつきの行方不明が表向きになった。捜索願が出され、警察による捜査が始まる中、真中の元には二通目のビデオテープが届く。真中は恐る恐る、ビデオテープを再生する。そこには跪き、男たちに奉仕する彼女たちの姿があった。時間以内に射精させられなければ、罰ゲームとして肛門に浣腸液を入れられる。繰り返す罰ゲームの果てに、叫び声を上げながら脱糞する少女たち。四つん這いになり糞を垂れる家畜のような姿に、もはや人間の尊厳はなかった。
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 ここまでが第2章。脱糞シーンは作者の好みなのだろうが、徐々に状況に馴れてきてしまっている少女の姿が印象的。じわりじわりと犯されてゆく彼女たちを、何も出来ないまま、ただ見つめることしかできない。しかもそれは目の前の現在ではない。ビデオを撮った当時の様子を、場所も分からないまま静観するのだ。時間と空間の両方で隔絶される無力感に、僕はただただ射精した。

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 罪悪感や無力感を感じながら、ただ自慰に耽る真中。そして三通目のビデオテープが届く。少女たちはただすかっり調教され、ただ従順に男たちとセックスする。そしてビデオの最後、男たちはこう提案する。「君もココに来て一緒に参加しないか?久しぶりに会いたいだろう?」「君も彼女たちを犯してみたくはないかい?」真中はひとりごちる。「違う…オレは…そんなことはしたくない」「オレがしたいのは——」
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 第3章はセックス描写が中心。要は一番の抜きどころ。禿げたオッサンが「つかさちゃんは俺たち専用の肉便器としてずっと大事に使ってあげるからね!」とか耳元で囁きながら腰を振るが、それを気にも留めず、現実から逃げるように無心でちんぽをしゃぶる西野が最高。作中、北大路は生来の淫乱さから即堕ちして、男たちに媚びるような台詞を吐きまくる訳だけど、西野は基本的に喋らない。そこに屈しようとしない意志の強さの欠片を見ながら、にもかかわらず現実の理不尽を解決できない己の無力さに僕は崩れ落ちる。本章で西野の唯一の台詞「オシリにオシッコしたらまたウンコでちゃう… 口かオマンコにオシッコしてよぉ… お願いだからぁ」には、恥の観念を僅かに保ちながら、幼児退行と倒錯を感じさせる物悲しさが溢れている。

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 電車内で乗客に痴漢プレイを懇願する北大路、太腿に「公衆肉便器」と描かれ、口と肛門に尿を注がれる西野、便所でアナルセックスをして喘ぐ東城。その映像を編集する真中の姿が、そこにはあった。「オレがしたいのは彼女たちを犯すことじゃない」「今までだってオレは犯すどころか触れてすらいない」「オレは撮ることが出来れば良かった」「たとえ男達の性処理用肉便器として犯され汚されても いちごパンツを履いた彼女たちを———— 撮れれば良かったんだ」

 これが最終章。何もできず、ただ消極的に見ることしかできなかった真中は、自らビデオカメラを手に取り、とうとう積極的に彼女たちを見つめる。いちごパンツの少女たちと隔絶された少年の諦観と悲哀が、乾いたモノローグで描かれる。僕たちはただ、己の無力を甘受して現実を見つめなければならない。打ちのめされ、嗚咽を漏らしながら射精する。これがマイ・フェイバリット・エロ同人。

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 ううううう。レビューしているだけで射精しそう。なんて作品だ。カメラを通して淡々とエロが描かれ、女たちの心情の描写が一切ないのも、この作品の大きな特徴だと思う。手の届かない存在の気持ちなんて分かるはずもないし、別に犯される立場に感情移入して気持ちよくなるつもりも毛頭ない。ただ無力感でシコる。この点において、これを上回る作品を僕は知らない。


 あ、そうだ(唐突)。最後にちょっとダイレクトマーケティングします。
 無力感で射精といえば、中野でいち『hでhなA子の呪い』という作品があります。

hなhとA子の呪い(1)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

hなhとA子の呪い(1)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

僕が所属する漫画読みサークルにおける2016年漫画ランキングの第1位です。会誌に書いた紹介文を、下に貼り付けておきますね。

「君は処女か?」見合い相手にそう尋ねる男はブライダル企業の若手社長・針辻真。彼は性欲を異常なまでに嫌悪している。「性欲は人を傷つける」「性欲は人を狂わせ惑わせる愛の敵」「私は誇り高き純愛主義者だ!」そう主張する針辻の耳元に幼女が囁く。「本当はエッチなことしか考えてないくせに~♥」彼女の名前はA子。初恋のトラウマと性への恐怖が生んだ針辻の幻覚だ。A子の言葉は呪いのように付きまとい、行く先々で針辻を翻弄する。トイレに公園、女性専用車両、そして最愛の秘書・南雲七海の目の前で。針辻は頭を抱え必死に性欲を否定し続けるも、とうとう限界を迎えてしまう。「もはや俺にはあらゆることが『エロい』か『逆にエロい』としか思えない……」彼の南雲への愛は「真実」なのか。A子とは何者なのか。呪いの渦に溺れる針辻が辿り着く結論とは。性愛への渇望と憎悪という、誰しもが抱える自己矛盾。キュビズムを思わせる独特の画風と、リリカルな台詞の洪水によってそれを巧みに抉り出す。『十月桜』の中野でいちの意欲作。

 こんな作品。これら話題の漫画についての座談会を収録した『京大漫トロピー Vol.17』は、コミックマーケット91 3日目東V35aにて買えます。僕は編集長をやったり、個人寄稿では『いちご100%』を引き合いに出して『ニセコイ』について文句言ったりしました。よかったら買ってください。

 じゃあね~。