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トーチソング

方向音痴 車に轢かれ

9月1日(木) たまこラブストーリー観てきました。

 題の通り、映画『たまこラブストーリー』を観てきた。
 内容紹介しながらのレビューをしても陳腐になるので、観てて感じたことを垂れ流していく。

 まず、いい映画だった。京アニってすげぇわ。本当に丁寧に作り込んでいて、二回目だと随分気づかされる点が多い。細かな描写が雄弁な分、セリフや演出に少ししつこさも感じたけど、主人公・たまこは鈍感だし、分かるようにせんとアカンのかなと思えば、納得できる。
 二度目の今回も以前と同じように、最初はベッタベタの臭い演出に笑ってしまうんだけど、いつの間にか引き込まれていた。鴨川の飛び石で、もち蔵がたまこに告白するシーン。動揺したたまこは川に落ちて、そこから走り去る訳だけど、彼女の視界は依然とはまるで別になっている。いつもの商店街は、パステルカラーの色彩でもやもやしたものになっていて、たまこは無我夢中で走り抜ける。結局、川でコンタクトを落としたのが原因ってオチがあるんだけど、もちろん根底は告白されたことで彼女の世界が変わったからだ。この告白シーンぐらいから魅せられて、臭い演出に笑うこともなくなる。こっちの見る世界まで変えられてしまう。これを前回も今回も見事にやられて、その巧みさに改めて感心した。
 浪人生から大学生になって、何かしら見方が変わったかというと、大した変化はないように思える。進路においては目的を成就していても、恋愛に関してはいまだに振り出しにいるからだ。理屈の上での恋愛感覚でしか楽しめないのは少し寂しいけれど、今更恋に目覚めたところで、その感覚を登場人物たちと共有できるかは怪しい。
 さて、大学生という身分になったから変わった点はそれほどない(もち蔵を呪うことはなくなった)が、京都に移って変わった点は明らかにあった。
 京都アニメーションは会社が京都にあるだけあって、舞台となる京都を徹底的に丁寧に描く。出町枡形商店街、鴨川、京都駅など、こっちに1年以上住んで何度も見た光景がスクリーンに映し出される。そんな空間で、登場人物たちは青臭いラブストーリーを展開する。それを見ていると、なんというか、異物感が湧いてきた。登場人物たちに対して、ではない。自分が異物なのだ。この素敵な世界は、本当に俺が住んでいる京都なのか。もち蔵が告白した鴨川は、俺が深夜徘徊で立ち寄るあの鴨川と同じなのか。もちろん現実と虚構なので別の世界なんだが、京アニの丁寧な筆致が虚実をぐちゃぐちゃにしてしまう。ついには、あの空間に俺がいるのはおかしいんじゃないか、と思い始める。上映中は話に引き込まれていたので、異物感も何となくで済んだが、上映後にそれは押し寄せてきた。
 MOVIX京都を後にして、駐輪場に停めていた自転車に跨り、河原町通を横切って、鴨川に出る。右手に暗く唸る流れを見ながら、川沿いを走っていると、抱えていた異物感が膨れ上がる。これがあの鴨川か、と思うと、自分がああいった甘酸っぱい世界とは隔絶されていたことを改めて自覚した。そんな自分がいま鴨川沿いを遡って走っていると思うと、なんだか混乱してくる。ああああ、と力なく声を上げながらペダルを漕いだ。
 たまこたちと同じ世界で共存なんてことはまるで出来そうにないし、明日から京都を離れられるのは幸いだ。

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 お幸せに。